マイクロネットが考えているこれからの産業用システム
--そして「Provie」
マイクロネットは1989年の創業以来、産業用システムの要素技術やアプリケーションシステムの開発に携わってきました。その間の30数余年で世の中の要素技術も変遷してきたと認識している。
私の立場で認識している要素技術の変遷とは、
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制御コントローラをハードウェア、ソフトウェアで、あえて分類すると
① ハードウェアPLC(三菱電機やオムロン、横河電機、ロックウェルなどのPLC)
この方式のPLCコントローラは産業用に大きく普及している。ヨーロッパを中心にこの分野で産業用PCのハードウェアやソフトウェアを使って標準化をしたり、PLC機能をソフトウェアで実装するソフトウェアPLCが普及しているしているところもあるが、現時点では、特に日本ではPLCベンダー間のハードウェア及びソフトウェアの互換性はなく、「ガラパゴス化」していると言わざるを得ない。
従って、共通の技術参考書やセミナーは少なく、それらは機種に依存している。
② C言語を使う汎用の制御コントローラ
このジャンルのコントローラはかつてはVMEやMULTIBUSなどの産業用共通バスが使われることが多かったが、今ではほとんどがPC技術を使ったIPCになった。マーケットの大きな情報処理分野で活用されているPC製品やPC技術は、Ethernetと同様に、コストやソフトウェアエンジニアの活用が比較的容易なので優位性がある。
また、そのPCのハードウェア技術も汎用バスがISA、(PC-98)、PCI、PCIxと変遷し、最近はそのニーズも少なくなってきていて、デジタルやアナログの入出力はフィールドバスのようなネットワーク化されてきている。
一方、ソフトウェアとして、OSはWindows系とLinux系がほとんどであるが、それぞれミリ秒レベルのリアルタイム性を実現する拡張機能を実現する技術が普及している。
また、PLC技術をIEC規格などで標準化し、IPCで動作するソフトウェアPLCが普及している。
これらのハードウェア、ソフトウェアの技術はほとんど標準技術であり、共通の技術書や拡張ソフトウェアの入手が比較的容易である。
IPCを汎用用途で使う場合はOSとしてWindowsが多く、Linuxは専用コントローラや組み込みで使われることが多いようだ。
Industrie4.0のような、産業用システムの先進国ではBeckhoff社のTwinCATのようにWindows系のリアルタイム機能と汎用のIPCを使ったコントローラが急速に普及してきている。
③ マイコンボード
今となってはすべての電子デバイスがLSI化されてマイコンの定義が難しいが、概して言うとAMDを含むインテルのx86, x64 CPU以外のCPUチップをマイコンと称していると理解している。そしていろんなマイコンベンダーが数多くのマイコンシリーズをリリースしてきたが、現時点ではその多くはARMが設計したものに集約されたと理解している。これらのマイコンはスマートフォンなどに利用されるほかは、家電製品やセンサー、周辺機器などの量産品の組み込み機器に利用されていて、汎用のマイコンボードとしての流通はほとんどない。時々話題になるRssberry Piは産業用デバイスとしては未知数だと理解している。(産業用システムは統合化の方向に向かっているので、どういう普及の仕方をするのか興味深い)
に分類できると考える。
制御機能と情報処理機能の統合
例えば、ローカルな測定器やエレベータ制御のように計測制御や制御機能は単独で閉じた領域で使われることが多かったが、最近は物流を含めた生産計画や品質向上、リードタイムの短縮などのニーズから制御装置と、それに関連した情報を同時に管理制御する機能のニーズが高まってきた。
このニーズを実現するやり方の一つは制御装置と情報処理システムをネットワークで結びつけることで今までも実現できなかったわけではない。しかしながら異なるシステムをネットワークで結びつけるには、データフォーマットの整合性や、通信プロトコルに課題があった。
これを改善する方法として、制御機能と情報処理機能を統合化し、一体として運用するという考えが普及しつつある。但し、これは単に装置の問題だけではなく、運用する組織の課題もある。
制御機能と情報処理機能を統合する効率的な方法の一つに、それぞれのコンピュータシステムを統合するやりかたがある。情報通信の分野では高性能なPCに仮想化システムを構築し複数のサーバー機能を頭語するやり方をすでになっているケースが多い。
制御機能と情報処理機能の統合は必要な性能のIPCまたはPCにそれらの機能を統合実装することで実現できる。幸いPCはマルチコアCPUで16とか32個のCPUで構成されているので、メモリーを適量実装すれば機能の統合化は比較的容易である。また、PCのコアで0.1ms程度のリアルタイム性を実現する性能は安価に実現できる。
PLCとRTOS/C言語の統合、そしてマイコンとの統合
制御機能はPLCもしくはリアルタイムC言語プログラムで実現することが多く、IPCではそのいずれかをあるいはその両方を同時に動作させることができる。
但し、日本の制御システムでは、PLC技術とRTOS/C言語によるコンピュータ制御技術は技術文化が異なるので、ヨーロッパなどと違って一人のエンジニアが両方の機能を使い分けるということはあまりやらないかもしれない。
ただ、この2つの技術にはそれぞれの特徴があり、それらを使い分けるメリットはある。
マイコンのプログラミング技術はRTOS/C言語技術ほとんど同じである。マイコンシステムでは再利用するプログラム群(ライブラリ)が少なく、ファイル処理や、Ethernet通信や複雑な演算処理を行うことは少ない。。
また、比較的大きな制御システムでは、メインの制御コントローラからマイコンシステムを分離させて、RS232Cや場合によってはEthernetで接続して利用することがあると思うが、そのマイコンをメインの制御コンピュータと統合する方法もある。
マイコンシステムをメインの制御コンピュータと分離する理由の一つに、信号の入出力や簡単な演算処理はセンサーや駆動装置に近い機側に分離設置したほうが高速で効率的だと考えていた。
しかしながら、外部I/OシステムのEtherCATを使うようになると、マイコンを機側に置く、処理速度的な意味はない。EtherCATを使ってメインの制御コントローラで高速のCPUを使って処理したほうがよりである。
制御コンピュータとして産業用PC(IPC)を使う場合、マイコン機能も同じIPCに統合するほうが低コストで開発効率も高く、保守性、信頼性の観点でもメリットがある。
産業用Ethernetの普及
情報処理コンピュータの要素技術であったEthernetが産業用途でも多く使われるようになった。その大きな背景は、大量利用大量生産によるコンローラLSI(NIC)の大幅なコストダウンだと理解している。
標準的なPCには必ずNICが実装されているし、そのことによりコストアップもほとんどない。
また、従来は専用のデバイスやケーブルを使っていたフィールドバスなどの産業用ネットワークでも、EtherCATやCC-link-IE、profinet, Ethernet/IEのようなEthernetをリアルタイムで利用する技術(RTE)とそのソフトウェアが普及するようになってきた。
特にEtherCATをIPCで使う場合にはIPCにデフォルトで実装されているEthernetチップ(NIC)がそのまま使えるので、特別なインタフェースカードをIPCに実装する必要がないことは特筆できることである。
クラウドシステムとのネットワーク化とエッジシステム(特にRT-edge)
産業用コンピュータシステムでもクラウドコンピュータが使われることはある。よく引き合いに出されるのは部屋の温度やプラントのセンサーの値、電力の使用量をマイコンベースのIoTゲートウェイを介してクラウドコンピュータにデータとして蓄積し、トレンドグラフなどでその変化を監視したり、最適な自動制御を実現する応用例がある。
また、距離的に離れた企業間や工程間の生産計画などを一元的に管理したり、設備の稼働状況を監視したりするシステムなどでクラウドシステムが使われる。
クラウドシステムではクラウドサーバーはインターネットを介して制御装置や、現場の生産管理端末と接続されるので、せいぜい秒単位以上の時間間隔や応答速度で接続されていて、ミリ秒単位のいわゆるリアルタイム制御に適用するのは難しいと言える。したがってクラウドシステムは生産管理や流通システムなどの情報処理で使われることが多い。制御の分野でも、温度や流量、タンクレベルの制御のようにせいぜい秒単位の時間制御が必要なプロセス制御にクラウドシステムが使われることがあっても、ミリ秒単位の周期を必要とするサーボ制御やPLC制御にグラウドコンピュータが使われることは少ない。
しかしながら、生産システムの生産設備の挙動動作監視や、AI機能をリアルリアルタイムで利用する制御システム、およびミリ秒単位の応答を必要とする一部の金融システムなどでは、処理性能的に機能を限定してクラウドシステムと同等以上の演算能力を必要とすることがあり、高性能のコンピュータを現場側に配置するエッジコンピュータシステムが使われるようになってきた。
マイクロネットでは、産業用PCとリアルタイムOSを利用して、1万分の一秒の応答速度を大容量のメモリーを利用できるリアルタイムエッジコンピュータシステム(RT-edge)の基本技術を提供している。